HYPNOTIC DOLLS annex

新年のご挨拶をするには相当遅いですが
今年もしばらくぼちぼちと更新しますので
どうぞよろしくお願いします。


特刑部で新年会をしたとして。
誰かが一番先に酔って寝てしまったとしたら？
それが三上さんだったら。。という、
新年早々大変な事になった三上さんの話(笑

CPは一応、三上×式部。Ｒ指定なし。

―New Year’s Fool―


隣で他人(ひと)が動く気配がしたのでそちらへ腕を伸ばすと、やんわりと掌を掴まれて小さく笑われた。
「おはようございます、三上さん」
他人行儀な呼び方に細く瞼を開くと、真横で上半身を起こして座っている清寿の向こうに、もうひとり、丸まって眠っている誰かの背中が見えた。
おや？と思って寝返りを打ちながら周囲を見渡す。

「ここ。。は？」

コンクリートが剥き出しの灰色の天井と、そこにぼんやりと映る揺れる光、カーテンの無い窓から差し込む弱い朝日。
見たことはある、だが、瞬時にここがどこか分からなかった。
「僕のうちです」
その言葉で、目の部屋で幾度となく見た記憶と目の前の景色が一致した。
だが、上から覗き込んでいる顔に手を添え誘うように引き寄せ軽く唇を合わせても、何故ここに居るのかという疑問は解決しない。
「昨日新年会で、大臣や五十嵐さんや笑太君に呑まされたとこまでは覚えてますか？」
そう云われれば確かに昨夜は、昨年末に出来なかった忘年会も兼ねての新年会だった。
最初からやたらと獅洞大臣に絡まれて、やっと解放されたかと思ったら五十嵐と御子柴にしこたま呑まされたのはなんとなく覚えているが。
「結局潰れちゃって、家まで送って行こうかと思ったんですけど無理っぽかったから笑太君も一緒にうちに連れて来たんですけど」
目の前で揺れる清寿の長い髪へと指を伸ばす。
「その後は。。？」
昨晩の記憶は途中から曖昧で、思い出せない。
「目の部屋で記録されてしまうから止めてって云ったのにあんなこと。。」

まさか。

「その顔。。覚えてないんですね？」
お互い下着は履いているが、他には何も身に着けていない。
良く見れば、向こうで眠っているのは御子柴か？
「ふたりであんな激しく。。」
咄嗟に手を伸ばして清寿の口を覆う。
「していない。。筈だ」
ノドがカラカラなのは昨日多量に飲酒して寝たからだ。
「それは、目の部屋で見れば分かります」
乾いた口調にそれ以上何も云えずに、口を噤む。
口元を覆った掌に伝わってくる詰めた様な息遣いと緊張感。

「。。酷いことをしたなら謝る」

清寿は一度大きく見開いてから瞳を伏せて、両手で私のその手を包むように持って柔らかく唇を押し当ててきた。
「ご自分では、した、と、思いますか？」
頬に添えるように触れて、しばらく見つめ合った後、首を振る。
「絶対にしていないと思うが。。覚えていないならもっとすまないと思う」


「っんだよー！俺達の負け。五十嵐も柏原も諦めろ！！」


寝ているとばかり思った御子柴が突然起き上がり、そう叫ぶと天井の監視カメラへ向かって枕を投げた。
「『謝る』に賭けたヤツはいなかったんだけどな～。予想大ハズレ！」
ボリボリと頭を掻いて大欠伸をしてから御子柴がにやりと笑った。
「結局清寿のひとり勝ちだな」
呆気に取られている私ににこにこと微笑みかけている清寿に視線を向ける。
「これは。。？」
「新年会のおまけの余興、みたいな？」
まだ事態が把握出来ないでいると、御子柴が清寿の頭を小突いた。
「お前ウソつくのが下手なんだよ」
後頭部を押さえながら清寿が私に向かって片目を軽く瞑ってみせる。

「因みに御子柴」

枕元に置かれた眼鏡を掛け直して、ベッドから抜け出そうとしていた御子柴に向かって声を掛けると、見て分かるくらい身体が飛び上がった。

「五十嵐、柏原、式部以外に面子はいるのか？各々何と賭けていた？あと、何を賭けていたか？答えによっては処罰の対象にするが？」

そこで清寿が視界に割って入って来た。
「酔わされて先に寝ちゃった三上さんも悪いんですから。ここは笑ってスルーしておかないと、ね？」
その笑顔でそんな云われ方をされたら否定する言葉も思い付かなくて大きな溜め息だけを返したら、フリーズしていた御子柴が足音を殺しつつも急いでバスルームがあると思われる方へ逃げてゆくのが見えた。

「式部。お前は何と賭けたんだ？」
「秘密です。信じてましたから」

そういう答えが返ってくるとは思わず虚を付かれたところで頬にキスされたのを監視カメラ越しに見ている者共に見られてしまったのが、今年最初の後悔となった。


―End―