HYPNOTIC DOLLS annex
企画・リク用別館。 DOLLS・同人・BLに興味の無い方はご遠慮ください。
At the first snow flower of the year 。。
- 2015/01/06 (Tue) |
- Novel-三上式- |
- CM(0) |
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三上さんの誕生日の話は、
やっぱり三上×式部で。
皇帝が変わって政府が変わった後も
ある人のおかげで法務省内の役職に
前特刑関係者が幾人か残っているという
捏造設定有り。
今年初めての雪が降った日に、というイメージで
中島美嘉『雪の華』のGACKTバージョンを聴きながら
書いてみました。
R指定なし。
ほんわりしていただけたら嬉しいです。
やっぱり三上×式部で。
皇帝が変わって政府が変わった後も
ある人のおかげで法務省内の役職に
前特刑関係者が幾人か残っているという
捏造設定有り。
今年初めての雪が降った日に、というイメージで
中島美嘉『雪の華』のGACKTバージョンを聴きながら
書いてみました。
R指定なし。
ほんわりしていただけたら嬉しいです。
― 雪の華 ―
「来たのか」
呆れたようにも、分かっていたというようにも見える小さな笑みが口元に浮かんだのは一瞬で、室内との温度差で曇った眼鏡を外した顔はいつもの冷静さ。
「お疲れ様です」
駐車場の入口からは死角になっている位置に居たから車から数mの距離に近付くまで気が付かれなかったので満足して、笑みを返す。
「こんな日にわざわざ出歩かなくたって・・・風邪をひいたらどうする」
キーロックが解除される音と共に、助手席に滑り込む。
「雪で帰って来れなくなる前に迎えに来ました。メール、読んでくれたんでしょう?」
降ってくる雪がまるで桜の花びらみたいで、独りで部屋の窓を見ていたら彼を喪った時の光景がフラッシュバックして叫び出しそうになった。
・・・なんて云ったらまた心配を掛けてしまうから、そこは云わないでおく。
「そんな事より!僕の生体認証がまだ有効だったのがビックリでした」
ダメ元で法務省関係者ゲートの眼底認証を受けたらあっさり通れたこと以上に、省内に入った途端懐かしい顔に出迎えられてまた驚いた。
「そんな権限は今の私には無い。ああ、なるほど。獅洞議員に会ったんだな」
呆然と見つめる僕に足早に近付いてきたのは柚原秘書官で、今なら時間が取れるからと急かされながら連れて行かれたのは獅洞元法務大臣、現議員の部屋だった。
「はい。挨拶の代わりにとチョコをくれましたよ。相変わらずですね」
デスクの引き出しからひょいと取り出して持って行けと渡された高級ブランドのチョコレートの箱をポケットから出して運転席に座った尊人さんに見せると、眼鏡を掛け直してから今度はハッキリと呆れた顔で溜め息をついた。
「本当に食えないなぁ、あの人は」
意味が分からなくて首を傾げると、シートベルトをするようにと指で指示され慌ててベルトの金具を持ったところで尊人さんが話し出した。
「ついさっきの話だが、議員から突然呼び出されて定時通りの退社と明日からの連休を命令された。お前からのメールが届いてすぐぐらいに」
「連休?」
「ああ、しかも3連休だ。それとこれを渡してくれ、と」
そう云って手渡されたのは宛名書きの無い白い封筒で、受け取ってみたら硬い板状の物が入っているのが分かった。
「中を見てもいいですか?」
優しい眼差しで僕の目を見て、静かに頷いてくれた。
「勿論」
封のしていない封筒から引っ張り出したそれは鮮やかな絵柄のカードで、そこに書かれた議員直筆のメッセージを読んだら吹き出してしまった。
「何が書いてあるんだ?」
カードを引き抜かれそうになって、運転席側と反対の方へ隠す。
「年始の挨拶と、」
「と?」
ハンドルに両肘を付き怪訝そうに僕を見る様子をチラッと横目で見てから、カードとその間に挟まれていた紙片に視線を戻す。
「読んであげましょうか?」
「そんなに勿体ぶるような内容なのか?」
「ホントに中を見ていないんですね」
「お前宛と云われて渡されたんだから当たり前だろう」
口元をカードで隠して笑うと尊人さんは焦れた感じで手を伸ばしてきたので、体を大きく横へと傾けて逃げる。
「清寿」
鋭くなった口調に肩を竦め、本気で怒らせたくはなかったのですぐに内容を読み上げた。
「『 Happy new year to 式部!そして、」
一拍置いて、運転席の方へ体ごと顔を向ける。
「 Happy Birthday to 三上!!』ですって」
唖然とした後で大きく息を吐いた尊人さんに、カードに挟まれていた紙を渡すと流石に驚きを隠せなかったようだ。
「温泉?」
「料金も支払い済みみたいですよ、今日から3泊分の」
柚原さんが作ってくれたと思われる案内状にはTVで見たことのある有名な温泉旅館の予約完了確認メールのコピーと地図まで添付されていて、大きな傷跡が体に幾つもある僕に配慮してか『各客屋に露天風呂(温泉)が付いているのでご心配なく。』とまでわざわざ記されていた。
「愛されてますね、三上さん!」
「大変悔しいが、負けを認めざるを得ないようだな」
「え?」
言われた意味が良く解らなくて目を丸くして口籠もったら、小さく笑って指先で頬を撫でてくれた。
「行きたいか?」
「行きたい!!・・・でも、尊人さんに迷惑がかからなかったらでいいんですけど・・・」
即答してしまってから、顔色をうかがう。
「端末を持って来ているから仕事の心配はしなくていい」
運転席側へ身を乗り出すようにしていた僕の唇にふわりと重ねられた唇の温かさに、照れて顔を伏せる。
「シートベルトを」
「あ、はい」
きちんと前を向いて座り直し、云われたようにシートベルトを締める。
「このまま行くの?」
走り出した車がいつもと違う方向へ曲がったのに気付いて尋ねると、そんな質問をされるとは思っていなかったという顔をされた。
「今夜からの予約じゃなかったか?」
ちょっと焦って浮かせた背を、再びシートに預ける。
「けど僕、お誕生日にはまだ2日もあるからってプレゼントも何も用意していないし・・・」
前を見たまま、ははっ!と声を出して笑った尊人さんが真顔になった。
「2人で過ごせる時間が私へのプレゼントのつもりだろう。あの人の考えそうな事だ。全く・・・すっかり読まれているようで腹が立つが、厚意を無にする謂れは無い」
ブツブツと呟く横顔を見ていたら照れ臭くなって、横を向いて外へ目を遣った
。
この先、雪が降る日には悲しい出来事があったあの日の光景ではなくて、今のこの幸せな時間を思い出すことにしようと決めた。
―End―
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