HYPNOTIC DOLLS annex
企画・リク用別館。 DOLLS・同人・BLに興味の無い方はご遠慮ください。
桜の話。。
- 2010/04/04 (Sun) |
- Novel-Title- |
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春コミで配布した無料ペーパー用SSのボツ原稿に加筆。
3月下旬開催の春コミにちなみ、ペーパーには毎年桜の話を書いてます。
桜と云えば。。のあの方絡みの作品が多い傾向。
去年は初々しい清寿がメインだったので、今年は笑太目線の話を。。
大切なひと、になる為の、ゆるやかで優しい時間。
そんな雰囲気を描きたかったのですが。。
長くなってしまったのでボツに(涙
ある設定以外は全部別の話をペーパーに載せましたが。。
こっちも結構好きだったのでUPしてみました。
3月下旬開催の春コミにちなみ、ペーパーには毎年桜の話を書いてます。
桜と云えば。。のあの方絡みの作品が多い傾向。
去年は初々しい清寿がメインだったので、今年は笑太目線の話を。。
大切なひと、になる為の、ゆるやかで優しい時間。
そんな雰囲気を描きたかったのですが。。
長くなってしまったのでボツに(涙
ある設定以外は全部別の話をペーパーに載せましたが。。
こっちも結構好きだったのでUPしてみました。
-Paradise Lost-
月日が経つのは早い。
徹夜の任務を終えて部長室へ向かっている途中で法務省の中庭を眺めたら、桜の花が咲き始めていた。
俺の視線を追い掛けて、それに気付いた清寿が呟く。
「もう桜の季節になるね」
一年。また一年。
綻び出した蕾から目を背けてもあと数日も経てばどこもかしこも花びらだらけになって。。
多忙な日々に埋もれそうなっても忘れることなど許さないと云うようにアイツは俺の名を呼び、哀しく微笑む。
―― 笑太。。
「。。桜は苦手なんだ」
丸く見開かれた瞳(め)が俺を真っ直ぐに捕らえてから、何かに思い当たったかのように揺らいで、細められた。
「聞いてんだろ?五十嵐か、三上さんから」
重く落ちた沈黙は肯定の証だろう。
窓ガラス越しの陽光が窓際に立つ清寿の輪郭を照らし、その顔に翳を落として表情を曖昧にする。
「清寿、悪ぃ。報告行っといて。昼までには戻るから」
「え、ちょっ!待って笑太君っ!!」
背中に視線を感じながら、廊下の端にあるドアから中庭へ出た。
この時期、三上さんも五十嵐も柏原も俺に対して厳しい事を云わない。
清寿のいつも通りの気遣いや笑顔でもイライラする。
甘やかしてなんてくれなくていい。
だけどそれを本人達に云ってしまえるほどもう子供じゃない。
春の陽射しは暖かくて、芝生の上に横になるとすぐに眠くなった。
―笑太はよく眠るね。
お日様の光みたいな髪。淡い色彩の瞳。白すぎる肌。
柔らかい声で呟きながら俺の頭を撫でる手のひらの感触まで覚えて。。
ん?
「。。何してんだ?」
薄く瞼を開くと、俺の頭を撫でていた清寿がにこっと笑った。
「笑太君が泣きそうな表情(かお)してたから」
優しく微笑み、それが当然かのように柔らかく髪に触れてくる。
「報告は?」
「してきたよ」
その指を拒まずに、撫でさせておく。
「。。三上さん、何か云ってた?」
清寿が首を左右に振ったのを見て、瞼を閉じる。
「五十嵐課長は心配してた」
ふわり。ふわり。
手袋を取った手の温もりも頭を撫でるリズムも清寿の髪の香りも心地良くて、眠気に襲われる。
「笑太君、最近ちゃんと眠れてる?」
この時期はいつも眠れない。
わずかな眠りの中でも時生の夢を見て泣いて起きる。
それが嫌で、眠らない。
この胸に残る、いつまでも治らずに膿み続ける傷痕のような記憶。。
救われる日など来ない。赦されることもない。
自分の事を愛してくれた人をこの手で殺してしまったという現実が悪夢になって、死に損なった俺を苛む。
「少し眠っていいよ。ここで見ててあげるから」
瞼を開く。
上から俺の顔を覗き込んでいた目と、目が合った。
「夢を見るのが怖いなら、うなされだしたら起こしてあげる」
眠れば絶えず悪夢を見るからという理由で不眠症の清寿。
優しい笑顔で封じ込めた過去は一応知っている。
でもそれは組んでしばらくしてから五十嵐から聞いたもので、真実とは限らない。
肘を付いて上半身を少し起こし、人差し指で清寿を呼ぶ。
「?」
芝生の上に膝を付いてにじり寄ってきたその太腿の上に、どさりと頭を乗せた。
「これなら寝ても大丈夫な気がする」
突然膝枕にされても少しの動揺も見せず、ははっ、と、短く笑うと清寿は目を細め、再び俺の頭を撫で出した。
「なぁ」
「なぁに?」
「清寿、お前のことを知りたい」
指を伸ばし、風に揺れる髪を絡め取る。
「俺の知らない真実(ほんとう)のこと、話して」
紅い唇が困ったように笑ってから、静かな声で語りだした。
それを聴きながら俺は眠りに落ちていった。
―End―
月日が経つのは早い。
徹夜の任務を終えて部長室へ向かっている途中で法務省の中庭を眺めたら、桜の花が咲き始めていた。
俺の視線を追い掛けて、それに気付いた清寿が呟く。
「もう桜の季節になるね」
一年。また一年。
綻び出した蕾から目を背けてもあと数日も経てばどこもかしこも花びらだらけになって。。
多忙な日々に埋もれそうなっても忘れることなど許さないと云うようにアイツは俺の名を呼び、哀しく微笑む。
―― 笑太。。
「。。桜は苦手なんだ」
丸く見開かれた瞳(め)が俺を真っ直ぐに捕らえてから、何かに思い当たったかのように揺らいで、細められた。
「聞いてんだろ?五十嵐か、三上さんから」
重く落ちた沈黙は肯定の証だろう。
窓ガラス越しの陽光が窓際に立つ清寿の輪郭を照らし、その顔に翳を落として表情を曖昧にする。
「清寿、悪ぃ。報告行っといて。昼までには戻るから」
「え、ちょっ!待って笑太君っ!!」
背中に視線を感じながら、廊下の端にあるドアから中庭へ出た。
この時期、三上さんも五十嵐も柏原も俺に対して厳しい事を云わない。
清寿のいつも通りの気遣いや笑顔でもイライラする。
甘やかしてなんてくれなくていい。
だけどそれを本人達に云ってしまえるほどもう子供じゃない。
春の陽射しは暖かくて、芝生の上に横になるとすぐに眠くなった。
―笑太はよく眠るね。
お日様の光みたいな髪。淡い色彩の瞳。白すぎる肌。
柔らかい声で呟きながら俺の頭を撫でる手のひらの感触まで覚えて。。
ん?
「。。何してんだ?」
薄く瞼を開くと、俺の頭を撫でていた清寿がにこっと笑った。
「笑太君が泣きそうな表情(かお)してたから」
優しく微笑み、それが当然かのように柔らかく髪に触れてくる。
「報告は?」
「してきたよ」
その指を拒まずに、撫でさせておく。
「。。三上さん、何か云ってた?」
清寿が首を左右に振ったのを見て、瞼を閉じる。
「五十嵐課長は心配してた」
ふわり。ふわり。
手袋を取った手の温もりも頭を撫でるリズムも清寿の髪の香りも心地良くて、眠気に襲われる。
「笑太君、最近ちゃんと眠れてる?」
この時期はいつも眠れない。
わずかな眠りの中でも時生の夢を見て泣いて起きる。
それが嫌で、眠らない。
この胸に残る、いつまでも治らずに膿み続ける傷痕のような記憶。。
救われる日など来ない。赦されることもない。
自分の事を愛してくれた人をこの手で殺してしまったという現実が悪夢になって、死に損なった俺を苛む。
「少し眠っていいよ。ここで見ててあげるから」
瞼を開く。
上から俺の顔を覗き込んでいた目と、目が合った。
「夢を見るのが怖いなら、うなされだしたら起こしてあげる」
眠れば絶えず悪夢を見るからという理由で不眠症の清寿。
優しい笑顔で封じ込めた過去は一応知っている。
でもそれは組んでしばらくしてから五十嵐から聞いたもので、真実とは限らない。
肘を付いて上半身を少し起こし、人差し指で清寿を呼ぶ。
「?」
芝生の上に膝を付いてにじり寄ってきたその太腿の上に、どさりと頭を乗せた。
「これなら寝ても大丈夫な気がする」
突然膝枕にされても少しの動揺も見せず、ははっ、と、短く笑うと清寿は目を細め、再び俺の頭を撫で出した。
「なぁ」
「なぁに?」
「清寿、お前のことを知りたい」
指を伸ばし、風に揺れる髪を絡め取る。
「俺の知らない真実(ほんとう)のこと、話して」
紅い唇が困ったように笑ってから、静かな声で語りだした。
それを聴きながら俺は眠りに落ちていった。
―End―
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