HYPNOTIC DOLLS annex

御子柴×式部。Ｒ18指定。

御子柴→式部→三上という、
一方通行の恋の話。。
３話前より続いています。

設定では９月２１日の夕方。
清寿の誕生日当日のこと。。

―求める衝動―


「シたい」

エレベーターのドアが閉まった瞬間に呟かれた言葉。
聞き間違いかと思って、並んで立つ清寿に視線を遣る。
その横顔にも、真っ直ぐ肩に落ちた髪にも、一縷の乱れも見えない。

「報告の後で」

気のせいだったか、と、前を向いた刹那に清寿が唇をほとんど動かさず云った。
最上階のボタンを押した指が静かに身体の横に下りて、すぐ傍にあった俺の手に伸びてきた。

「なんかあった？」

手の甲と甲を触れ合わせても手袋をしているから体温は伝わってこない。
指と指を絡めて、拒めない自分を呪う。

「何も」

落ち着いた笑顔からは事情が読めない。

チン。

目的の階に着き、エレベーターのドアが開いた。
するりと指が離されて、清寿が先に降りる。
後に残った布越しのもどかしい感触を惜しむように手を握り、その後を追うように俺も降りた。

「笑太君？」

何事も無かったかのような顔で振り返り、微笑みかけてくる。

「ああ。はいはい」

立ち止まって一歩横に除けたのは先に行けということだろう。
いつものように数歩後ろを付いてくる清寿の事が気になって、注意力が散漫になる。

「なぁ。さっきの。。」
「後で」

ぴしゃりと云われて、口を噤むしかない。
俺以外は気付いていなかっただろうと思うのだけど、今日清寿は朝から機嫌が悪かった。
他の誰かが居る時は笑顔で穏やかな副隊長でも、俺と２人になると急に塞ぎ込んで、何を話し掛けても上の空だった。

コンコン。

「第一部隊、入ります」

任務完了報告の間、三上さんはいたって普通。
横に立つ清寿もごく普通。
奇妙に落ち着かない感じで、どうした？と訊かれてしまった俺だけが普通じゃなかった。
清寿が三上さんを好きなのは知っていても、三上さんが清寿をどう思っているかまでは知らない。
することはしている関係だと清寿の反応を見れば分かるから、それ以上はあえて訊いた事がない。

「明日は非番だな。ゆっくり休んでおけよ」

退室しようとした時に五十嵐に云われてその事を初めて思い出した。



「笑太君。階段で降りよう」

やっと来たエレベーターに乗り込んで更衣室のある階のボタンを押そうとしたら指を掴まれて、身体で押されて外に出された。

「え？！ここ最上階だぞ」

背後でドアが閉まる。

「いいからっ」

手首を掴まれて引き摺られるようにして歩かされ、非常階段の、防火シャッターも兼ねている重いドアを潜った。

「しよ？」

驚いている俺の唇に清寿の唇が重ねられた。
首に回された腕と髪に梳き入れられた指が欲情を煽る。
深く唇を求めながら腰を抱き寄せて、足を絡めて腿を擦り合わせる。

「何があったんだよ？」
「だから別に、何も無いって。今笑太君としたい。それだけ」

いくら通常では誰も使わないとはいえこんな公共の場所で、監視カメラに向かっての公開セックスなんて冗談じゃない。
プライベートを監視する目の部屋専用のカメラとは違い、ここのは法務省の警備室の管轄だ。
必死に抑えつけようとしている欲望に、清寿の、長い指が触れた。
前がはだけられて、昂りが外に取り出される。

「ちょっ！ま、待てって。。っ！」

跪いた清寿の頭に両手を置く。

「んっっ」

根元まで舐められて腰の奥まで響く快感に、突き放す事も出来ずに背後にあったドアに体重を預ける。
喘がせられながら見下ろす清寿の顔は色っぽくて、白い手袋で擦られる感触が新鮮で、背中がゾクゾクする。
こうなると清寿に惚れている俺はされるがまま堕ちてゆくしかない。
夢中で掻き上げた前髪の下から上目遣いで見られて理性を失い、咽喉の奥まで突く様に犯す。

「な。。んで。。？」

ここで脱ぐワケにもいかない隊服が邪魔くさい。
そう思った途端生温かい口の中で欲望が弾けて、頭が真っ白になった。

「笑太君。頂戴」

その後は流されるように。
引き寄せて、唇を奪って、後ろから求めた。
甘く啼き続け誰の名も呼ばずに達した清寿の中で、果てる。

「好きだよ」

荒い呼吸をしている背中を抱きながら、耳元で囁く。

「答えて」

耳朶にちゅっと音を立ててくちづける。

「答えて。。」

すぅっ。

清寿は短く息を吸い込んで、涙で濡れた瞳で俺を見詰めた――。


―End―