HYPNOTIC DOLLS annex

五十嵐×上條。

突発的に降りてきた寒い夜の話。。
こちらで以前このCPの話を書きまして
その続きのような感じです。

五十嵐さんは意外にセクシーかと。
璃宮は背伸びした恋愛が似合いそう。
故にこのCPとなったのかな。。
身長差も丁度良いし←ここ大事(笑

ニーズは全く無さそうな気がしますが
そこのところは横に置いといて(笑
しばらく続く。。かも。

―It’s begin to sleeting―


「。。最低」

前に向いたまま長い睫を伏せて、上條が呟く。

「それ、口癖なんだな」

無精髭の生えた顎を掻きながら、その横顔に向かって五十嵐が云った。

「散々飲み食いしておいてそれじゃあ、俺が報われないだろう」

からかうような軽い口調はいつもと同じ。だからこそ今夜は腹が立つ。

「奢ってくれなんて。。云ってない」

声が小さくなったのは、奢ってやるから呑みに行こう！と誘われて、嫌そうな表情(かお)をしてみせながらも仕事が終わって出てくるのを待ってしまったせいもある。

「そう云う割に良く呑んだなぁ！」

職場ではしないような話が色々出来て、趣味も結構被ることが分かって、正直楽しかった。
でもそれを認めるほど正直になれない上條が居た。

「ひとを散々待たせたんだからそれ位当然でしょ？」

新しい煙草に火を点けてゆったりと燻らす笑みを浮かべた顔を、睨み返す。

「別に待っててくれ、なんて、云わなかったぞ」

何を云っても本心を見抜かれてしまう様な気がして落ち着かず、上條は俯いて下唇を噛んだ。

「ホント、最低」

それを口にするとそれ以上踏みこまれない。
心を閉ざす呪文を唱えて、口を噤む。
五十嵐が無言で手元のグラスを掴むと、琥珀色の液体に浮かんだ氷が小気味の良い音を立てて揺れた。

「もう帰っていいよ。僕も勝手に帰るから」

沈黙に耐えかねて、そう云い捨ててカウンターの上に両腕を組んで突っ伏し、息を殺す。

「このまま？お前をここに置いて？」

驚いたというより可笑しいといった口調で訊き返されて、上條はムカつきながらそのままの体勢で数回頷いて見せた。

「ふぅん。。じゃあそうするかな」

ガタッ！とイスが動く音に心臓がびくっと反応して、自分の髪の間から目だけ覗かせてこっそりと隣の席を盗み見る。

「。。。っ！？」

するとすぐ間近に五十嵐の顔が在って、驚いて反射的に顔を上げてしまった。

「誰よりもひとりが苦手なクセに強がるんじゃねぇよ」

上條が居るのとは反対横の椅子の背に手を掛けてにやにや笑っている五十嵐に、何か云い返してやろうと開いた唇からは声を発することも出来ず、強く歯を食いしばった。

「黒瀬んとこに入り浸ってんのは、だから、だろ？」

グラスの中で、また氷が澄んだ音を立てた。

「。。だから何？隊員のプライベートまで詮索するのが諜報課の仕事なの？趣味悪。。」

やっと云えたのがこんな稚拙な悪態だけで、ちらりとこちらを見た時の五十嵐のからかうような目線に恥ずかしさと悔しさで上條の目頭は熱くなった。

「もうこんな時間か。ホラ、次行くぞ」

五十嵐は残っていた酒を飲み干して、今度は本当にイスを後ろへ引いた。

「。。もういい。帰る」

立ち上がってコートを羽織ると怪訝な顔で見つめる上條に向かって、エスコートするように目の前へ手を差し出した。

「うちに泊まってけ。しばらく帰ってないから汚いと思うがクレームは一切受け付けないから覚悟しとけよ」

表情を殺して、平然とした顔を作るのが精一杯だった。

「ずっと気になってたんだ、お前のこと。やっと誘えたんだから、もう少し話しをしていたいって云ったら迷惑か？」

真っ直ぐに向けられた優しい眼差しを拒める筈もなく、それでも素直になれずに出された手を身体で押して払うようにして上條はイスから立った。

「仕方ない。。」

肩を抱かれるように回された腕に躊躇して、一生懸命考えた憎まれ口の続きが云えなくなる。
促されるように並んで歩き、外に出ると細かい霙が降っていた。

「寒くないか？」

「。。寒くない。。」

上條はぼそっと答えてダウンコートのフードを頭からすっぽり被り、寧ろ熱いくらいに紅潮している頬を隠した。


―End―