HYPNOTIC DOLLS annex
企画・リク用別館。 DOLLS・同人・BLに興味の無い方はご遠慮ください。
僕はここにいる。。
- 2011/10/09 (Sun) |
- Novel-五十璃- |
- CM(0) |
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五十嵐×上條。R指定なし。
前作の反省も込めて秋らしい話を。
秘められた激情と静かな秋の夜の光景。
もどかしい駆け引きに勝敗があるとしたら?
山崎まさよし『僕はここにいる』のイメージで。
この曲の歌詞が答えのつもりで書きました。
ちょっとしたイベントも絡めてみたり。
本館含め当サイト初のある方の誕生日の話。。
いや~すっかり忘れていましたよ今まで(笑
インスピレーションをくださった
uーさんと彩音さんに感謝を込めて。
この話を捧げます。
前作の反省も込めて秋らしい話を。
秘められた激情と静かな秋の夜の光景。
もどかしい駆け引きに勝敗があるとしたら?
山崎まさよし『僕はここにいる』のイメージで。
この曲の歌詞が答えのつもりで書きました。
ちょっとしたイベントも絡めてみたり。
本館含め当サイト初のある方の誕生日の話。。
いや~すっかり忘れていましたよ今まで(笑
インスピレーションをくださった
uーさんと彩音さんに感謝を込めて。
この話を捧げます。
―Close to me―
好きで拗ねているワケではない、と、云い訳する。
なら何故?という質問には答えてくれもしないで。
いつものことだからと気にしなければしないでもっと拗ねる。
かと云って構い過ぎると五月蠅がる。
だから放っておけなくて。
でも、自分の好きにしているように思わせておいてやる。
この距離感は年齢差と等しく、一生越えられないものだと思っていた。
「遅かったな。ちょっと待ったぞ」
待ち合わせの時間に随分遅れてきたのは買い物をしていたからのよう。
手にぶら下げていた紙袋をイスの後ろに隠す様に置き、憮然とした表情でしばらく黙って座っていて、急に前を向いたと思ったら。
「あのさ。会えるとか会えないとか、もう少し早く分からないの?」
いきなりのクレームを聞き流して店員を呼び、璃宮の分のオーダーをする。
「ねぇ!」
「うん?別のが良かったか?いいんだろ?カフェラテで」
きゅっ、と、唇を噛んだのは肯定したのと同じ。
「。。それでいい」
笑いそうになるのを誤魔化す為に新しい煙草を咥えて火を点ける。
目鼻立ちが整い過ぎているから黙ってしまうと表情を読むのは難しいが、見慣れてくれば不機嫌かそれ以外かの区別くらい付く。
「聞いてる?五十嵐。。さん」
珍しく名字呼び捨てでなかったのは丁度その時テーブルに注文したものが運ばれてきたからで、口を尖らせて俯きミルクの泡の上に描かれたハートマークを睨んだきり何も云おうとしない。
「んなコト、事前に分かるようなら連絡してやりたいが仕事なんていっくらでもあるから無理なんだよ。分かってんだろ?」
とんとん、と、指で弾いてタバコの灰を灰皿へ落とす。
「。。わざわざ時間を作ってくれてるのは分かってる。。」
カサカサと乾いた音は、テラス席のフローリングに散っている落ち葉を靴の先で蹴飛ばしている音。
銀杏並木の奥にあるこのカフェは、コーヒーは旨いがそれほど人に知られていなくて喫煙可のテラス席が在って夜遅くまで営業しているので、こっそり待ち合わせするには都合が良い。
「なら拗ねるなよ」
拗ねてなんかないよ!とムキになると思いきや。
何も云わずにカップに口を付けた。
こくん、と咽喉が鳴る音が聴こえるほどの静寂の中、夜気に溶ける白い湯気越しにこちらを窺うだけで、目が合うと瞼を伏せる。
不機嫌そうではない。
寧ろその逆に見えるのは気のせいか、若しくは俺の願望か。
テーブルの上に置いたカップの持ち手に掛かったままになっていた手を人差し指で突いて注意を惹き、視線を捕らえる。
「疲れているなら帰るか?うちまで送って行こう」
引っ込めようとした指を掴まれて見つめ合う。
「違う」
「何が?」
「思っていた物が見付からなくて」
「買い物?まだ途中だったなら付き合ってもい。。」
「違う」
「だから、何が違うんだ?璃宮?」
ふぅ、と、短く息を吐き、指を握っている手を取ろうとしたら抵抗された。
「五十嵐、今日誕生日。。だよね?」
それ以上開くと瞳が落ちてくるんじゃないかと思うほど目を瞠って。
「今年は覚えていたからプレゼントを、探していたんだけど、気に入ったのが見付からなくて。まさか今日こうやって会えると思ってなかったから」
今度は逆に逃れようとした冷たい手を捉まえて手のひらの間に挟んだ。
「貴方は自分の話をあまりしないから何が欲しいのか分からなくて。僕のことは何でも知っているのに、僕は、全然知らない。。」
付き合い始めた頃はまだまだ子供で、自分以外は何も信じない、他人の事に等興味が無いといった風だったのに成長したものだ。
軽く父親みたいな気分になって、いくら今日で1つ年を取ったからってそこまで歳の差は無いぞ!と心の中で苦笑する。
「全然、って訳じゃないだろ?お前だけしか知らない事も沢山あるんだけどな」
持ち上げた指先にくちづけて、イスの後ろにある紙袋を顎で示す。
「それ、プレゼントなら貰っとく」
「あ、うん。でもあんまり。。」
「大事にする」
目の周りと頬を赤く染めて。
怒らせたつもりはないがわなわなと震え出した口元が、徐に開いた。
「誕生日おめでとう。追い付くことは無いけれど、僕より先に逝ったら絶対に許さないからね」
褪せた黄色の銀杏の落ち葉がふわり、ふわりと。
テーブルの上のキャンドルの光で金色に輝いて見える璃宮の髪に降ってくるのを、愛しい気持ちで眺めていた。
―End―
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