HYPNOTIC DOLLS annex

三上×式部。

バレンタイン当日の話。
正確には前夜から当日の夜が舞台。

。。と云いつつ色気は無いです(汗

こういう夜もあるんじゃないか、と。
三上さん得？(笑)
でもきっと清寿も幸せ。。

Kalafina『Lacrimosa』のイメージで。

追記> 細かい所をちょこっと修正(2/14)

―Lacrimosa―


依存している。
そう云われればそうだと思う。

この手のひらが、胸が、背中が無くなったら。。
そう考えると眠れなくなる。
愛し合えば疲れて眠ることが出来るけれど。
それでも大概いつも夜中に何度も目を覚まして。
その度に今がいつか？どこなのか？時間と場所が曖昧で。
暗い天井と、壁と、もっと暗い窓の向こうを見詰めて怯えていることしか出来ない。


誰か僕をあの夜から連れ出して。。


また、目が覚めて
一瞬ここがどこだか分からなかった。
ぼんやりと部屋の中を眺めて、背中から抱かれた体勢なのにやっと気付いた。

あ。そうか。。あのまま寝ちゃったんだ。

後ろから髪にかかる寝息の主は、一緒に食事して自宅に帰ってきてシャワーを浴びる余裕も無くくちづけてくれながら服を脱がせてベッドに押し倒すと。。僕を抱く様にして眠ってしまった。

僕は裸で、貴方はネクタイを外してシャツの前をはだけただけ。

布団だけは足の指でなんとか手元まで引っ張ってきて、三上さんにも掛けて僕も包まることが出来た。
もう少し楽な格好にしてあげたいと思ったけどそれで起こしちゃったら可哀想だなと思って、それに抱き枕みたいに抱えられていたから動くこともままならなくて、途方にくれているうちに僕も眠ってしまった様だ。
首に回された腕を慎重に持ち上げると、くるりと身体を反転させて向い合せになった。
無心に眠る顔に手を伸ばし、そろそろと眼鏡を外す。

「う。ん。。」

小さく唸りながら眉根を寄せたので起こしてしまったかと思い身体を強張らせたら両腕が手繰り寄せる様に僕の背中を抱き締めたので更に身動きが取れなくなって、眼鏡を持った方の腕だけ辛うじて枕元へ伸べて出来るだけ遠くへ、それを置いた。

「わ。近い、近い」

思わず声に出して呟いてしまったのは視線を上から前に戻したら鼻と鼻の先が付くくらいの所に顔があって、ちょっと焦ってしまったから。

こんな疲れた隙だらけの寝顔を至近距離で見てたら僕の方から襲いたくなっちゃうよ！と、今度は心の中で呟いて、唇を尖らせて鼻の頭に、ちゅっ、と、啄むようなくちづけをする。
それからうっすらと髭が目立ち始めた顎にも、頬にも、最後にはもちろん唇の上にもくちづけて、寄り添う様にして目を閉じる。

「当日の朝に渡せるからいっか。。」

「。。何を？」

心臓が止まるかと思うほど驚いて顔を上げると、三上さんが薄く目を開いてこちらを見ていた。

「起こしちゃった？」
「普通目が覚めるだろ。あんな風に。。されたら」

口元が緩んで優しい笑顔になる。
良かった、怒ってない。

「まだ眠そう」
「ああ。。眠い」
「なら教えない。明日の朝のお楽しみ♪」

眠たげな左右の瞼の上に唇で触れて、目を閉じさせる。

「お疲れ様だもんね、三上部長は。眠れる時に沢山眠って」

後頭部に手が添えられて、頭が胸元に抱き取られる。

「お前は？」

顔を埋めるようにして瞼を閉じる。

「眠れてるよ、大丈夫。。うん。大丈夫。まだ眠れる。。」

額に、ちゅっ、と、柔らかいものが触れて、それがそのまま寝息に変わる。
これほど疲れていたのに時間が空いたから会いたいと云ってくれるなんて申し訳ないようで、嬉しくて、寝息さえも愛しく感じる。


あの夜を抜けて朝まで僕を導いてくれるのが三上さんだったらいい。。
そうしたら大人な貴方の優しさに甘えて自分の中の闇を思い出さずに暮らせそうな気がする。


胸に押し当てた耳から聴こえる規則正しい鼓動の音で、僕もゆっくりと眠りに落ちる。

忘れているだろうけれど明日はバレンタインデーだから。
本当は日付が変わったら渡そうと思っていた計画は白紙に戻して。。
朝になって貴方が目覚めたら一番にチョコをあげよう。
その時どんな表情(かお)するかが僕の明日の朝のお楽しみ。
少しは喜んで貰えるといいな。


この存在を失いたくなくて、眠りの中でそればっかり祈っていた。


―End―