HYPNOTIC DOLLS annex
企画・リク用別館。 DOLLS・同人・BLに興味の無い方はご遠慮ください。
繋いだ手を離さぬように。。
- 2011/02/12 (Sat) |
- Novel-五十璃- |
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五十嵐×上條。
R指定なしの9話目。
雪の降る日に降りてきた、雪の日の話。
おじさんだって夢を見る?(五十嵐さんごめん!)
そんな可愛いお話です。
R指定なしの9話目。
雪の降る日に降りてきた、雪の日の話。
おじさんだって夢を見る?(五十嵐さんごめん!)
そんな可愛いお話です。
―Bianca Neve―
「今夜メシ食いに行くからな。空けとけ」
すれ違いざまの囁きは、多分僕にしか聴こえなかっただろう。
濡れた髪を拭く為に頭に掛けていたタオルの端がふわりと広がって、目で追い掛けようとした後ろ姿を隠した。
数歩前を歩いていた瑞城が気配を感じて振り向き、一拍置いて元親が振り返って僕を見た。
「隊長?」
「璃宮。。?」
何でもない!と答える代わりに不機嫌そうに眉間に皺を寄せて見せて、ぷいっと視線を斜め下に外す。
それだけで何も訊かずに瑞城は小さな溜め息をつき、元親は無表情に前へと向き直る。
その察しの良さに安堵する。
誰にも知られてはならない関係を秘密のまま保つのは容易いようで難しく、四六時中一緒に居るこの2人にはいつか悟られてしまうのではないかと恐れつつもその時は開き直るか?終わりにするか?まだ決め倦ねている。
「隊長、なんだか嬉しそうですね?」
瑞城の余計な一言に内心焦りながらも余裕で黙殺した様なフリをした。
それよりも、よりによってこんな雪の日に誘ってきた五十嵐がどういうツモリなのかが気になって、その後部長室で報告した内容も更衣室で交わした会話の一つも覚えていない。
「おう!待たせたな」
自分の部屋、つまりは諜報課課長室に来て待っていろ、というメールに、外でお茶してる、と素っ気なく返して法務省を出てから約2時間後。。
2杯目のカプチーノがすっかり冷めてしまった頃五十嵐が来た。
「やっと来たね」
呆れた様に吐息を吐きながら云うと、五十嵐はニヤニヤ笑って顔の前で両手を合わせた。
「すまんすまん。あっ、すみません!エスプレッソ1杯お願いします」
片手を上げて店員に注文すると、僕の顔を正面から見て云う。
「だから俺の部屋で待ってりゃいいのに」
その視線から目を逸らす為に手元のカップを持ち上げて、一口啜る。
「。。だって僕が行ったら仕事にならないでしょ。。」
小さく呟いてから、自分の言葉に赤面する。
あの部屋で朝まで抱かれた記憶はまだ生々しく、胸の奥がキュンと疼いた。
「あ?何だって?」
幸いにも、その時丁度運ばれてきたエスプレッソに気を取られていたからそれは五十嵐には聴こえていなかった様だ。
「何にも云ってないよっ」
カフェの大きな窓の前の席に座った五十嵐の背中越しに、昨日から降り続いている雪で白く埋まりつつある外界を見る。
「なんでこんな日に外でごはん?早く家に帰らないと車で帰れなくなるよ?」
そもそも2人で外食するなんて最初の時。。付き合うキッカケになったあの夜以来だ。
家に泊まる時はいつも宅配ピザで、法務省の部屋ではコンビニで適当に買ってきて貰った物を食べた記憶しかない。
「車は置いてきた。雪道用のタイヤなんて持ってねぇし、お前乗せて事故ったりしたら大変だしな」
一息でデミタスカップを空にしてテーブルに置くと、すっかり冷たくなったカップに添えたままだった僕の指に、ピアノの鍵盤でも弾くみたいに触れてきた。
「お腹空いただろ?メシ食いに行こ」
自分も席を立ちながら上手にエスコートして僕を立たせてくれたから、柄にも無く少し緊張して下を向いてしまった。
羽織らせてくれたコートの袖に急いで腕を通し、会計済ませてドアの所に立つ五十嵐に駆け寄る。
「あれ?璃宮、手袋は?」
「あ、うん。。ロッカーに忘れて来たみたいで。。」
「ふぅん。走ると転ぶぞ」
優しい笑みに、素直じゃない僕は下唇を噛む。
「転ばないよ。運動神経は絶対アンタより良いって自信が有る」
「ま、そりゃそ~だな!お前達は身体を使うプロだもんな」
雪は日中までに比べれば大分小降りになっていて、傘立てから取り上げた傘は開かずぐいぐいと相手の胸元に押し付けながら嫌味を云う。
「何のプロって云いたいの?人殺しのプロ?」
自分のと僕の2本の傘を片手で持って、五十嵐は曖昧な表情を浮かべた。
「自分の仕事を卑下するなんてらしくないぞ、璃宮」
違う。違うんだ。
こんな事を云いたいんじゃなくて。
ただ、2人で居るだけでドキドキして、でもそれを認めたくなくて、今どうしたらいいか分からなくて。。
しっかりと自分自身を捕まえていないとパニックを起こしそうになる。
こんなのみっともない、と思うのに。
「っ!!」
ぎゅっ、と、片方の手を握られた。
「難しい事は置いといて、とりあえずメシ!でいいよな?」
その手は骨張っていたけれど大きくて温かかったから、強く握り返した。
しばらく無言で歩いて僕の動悸が治まってきた頃、前を向いたままの横顔で五十嵐がポソッと呟いた。
「実はさ、雪の日に白い息を吐きながら手を繋いで歩くっての、してみたかったんだ」
云い終えてほんの少しの間を置いてから、僕を見下ろした。
「。。今時そんな少女趣味なこと、学生だって云わないよ」
「はははっ!そんな充実した学生生活送ってないんだから仕方ねぇだろ?」
「ずいぶん寂しい青春時代だったんだね」
条件反射で口から出る悪態は全て豪快に笑い飛ばされて、もぞもぞ動き出した指に応えて指を絡める。
「うっさいな!お前だって似たり寄ったりのクセに。こういうのは恋人特権だ。嬉しいだろ?」
耳が痺れる程の寒さの中で、お互いの手のひらの間だけ熱くて少し汗ばんでいて、俯いて下唇を噛んで黙ったら不意に頭を掴まれて肩に寄り掛けるように引き寄せられた。
「。。うん」
「お?!素直だな。。どうした?お腹空き過ぎたか??」
あまりにも楽しそうに云うので寄り添った肩におでこで頭突きしてやったら余計嬉しそうに笑ったので、僕もつられて笑ってしまった。
―End―
「今夜メシ食いに行くからな。空けとけ」
すれ違いざまの囁きは、多分僕にしか聴こえなかっただろう。
濡れた髪を拭く為に頭に掛けていたタオルの端がふわりと広がって、目で追い掛けようとした後ろ姿を隠した。
数歩前を歩いていた瑞城が気配を感じて振り向き、一拍置いて元親が振り返って僕を見た。
「隊長?」
「璃宮。。?」
何でもない!と答える代わりに不機嫌そうに眉間に皺を寄せて見せて、ぷいっと視線を斜め下に外す。
それだけで何も訊かずに瑞城は小さな溜め息をつき、元親は無表情に前へと向き直る。
その察しの良さに安堵する。
誰にも知られてはならない関係を秘密のまま保つのは容易いようで難しく、四六時中一緒に居るこの2人にはいつか悟られてしまうのではないかと恐れつつもその時は開き直るか?終わりにするか?まだ決め倦ねている。
「隊長、なんだか嬉しそうですね?」
瑞城の余計な一言に内心焦りながらも余裕で黙殺した様なフリをした。
それよりも、よりによってこんな雪の日に誘ってきた五十嵐がどういうツモリなのかが気になって、その後部長室で報告した内容も更衣室で交わした会話の一つも覚えていない。
「おう!待たせたな」
自分の部屋、つまりは諜報課課長室に来て待っていろ、というメールに、外でお茶してる、と素っ気なく返して法務省を出てから約2時間後。。
2杯目のカプチーノがすっかり冷めてしまった頃五十嵐が来た。
「やっと来たね」
呆れた様に吐息を吐きながら云うと、五十嵐はニヤニヤ笑って顔の前で両手を合わせた。
「すまんすまん。あっ、すみません!エスプレッソ1杯お願いします」
片手を上げて店員に注文すると、僕の顔を正面から見て云う。
「だから俺の部屋で待ってりゃいいのに」
その視線から目を逸らす為に手元のカップを持ち上げて、一口啜る。
「。。だって僕が行ったら仕事にならないでしょ。。」
小さく呟いてから、自分の言葉に赤面する。
あの部屋で朝まで抱かれた記憶はまだ生々しく、胸の奥がキュンと疼いた。
「あ?何だって?」
幸いにも、その時丁度運ばれてきたエスプレッソに気を取られていたからそれは五十嵐には聴こえていなかった様だ。
「何にも云ってないよっ」
カフェの大きな窓の前の席に座った五十嵐の背中越しに、昨日から降り続いている雪で白く埋まりつつある外界を見る。
「なんでこんな日に外でごはん?早く家に帰らないと車で帰れなくなるよ?」
そもそも2人で外食するなんて最初の時。。付き合うキッカケになったあの夜以来だ。
家に泊まる時はいつも宅配ピザで、法務省の部屋ではコンビニで適当に買ってきて貰った物を食べた記憶しかない。
「車は置いてきた。雪道用のタイヤなんて持ってねぇし、お前乗せて事故ったりしたら大変だしな」
一息でデミタスカップを空にしてテーブルに置くと、すっかり冷たくなったカップに添えたままだった僕の指に、ピアノの鍵盤でも弾くみたいに触れてきた。
「お腹空いただろ?メシ食いに行こ」
自分も席を立ちながら上手にエスコートして僕を立たせてくれたから、柄にも無く少し緊張して下を向いてしまった。
羽織らせてくれたコートの袖に急いで腕を通し、会計済ませてドアの所に立つ五十嵐に駆け寄る。
「あれ?璃宮、手袋は?」
「あ、うん。。ロッカーに忘れて来たみたいで。。」
「ふぅん。走ると転ぶぞ」
優しい笑みに、素直じゃない僕は下唇を噛む。
「転ばないよ。運動神経は絶対アンタより良いって自信が有る」
「ま、そりゃそ~だな!お前達は身体を使うプロだもんな」
雪は日中までに比べれば大分小降りになっていて、傘立てから取り上げた傘は開かずぐいぐいと相手の胸元に押し付けながら嫌味を云う。
「何のプロって云いたいの?人殺しのプロ?」
自分のと僕の2本の傘を片手で持って、五十嵐は曖昧な表情を浮かべた。
「自分の仕事を卑下するなんてらしくないぞ、璃宮」
違う。違うんだ。
こんな事を云いたいんじゃなくて。
ただ、2人で居るだけでドキドキして、でもそれを認めたくなくて、今どうしたらいいか分からなくて。。
しっかりと自分自身を捕まえていないとパニックを起こしそうになる。
こんなのみっともない、と思うのに。
「っ!!」
ぎゅっ、と、片方の手を握られた。
「難しい事は置いといて、とりあえずメシ!でいいよな?」
その手は骨張っていたけれど大きくて温かかったから、強く握り返した。
しばらく無言で歩いて僕の動悸が治まってきた頃、前を向いたままの横顔で五十嵐がポソッと呟いた。
「実はさ、雪の日に白い息を吐きながら手を繋いで歩くっての、してみたかったんだ」
云い終えてほんの少しの間を置いてから、僕を見下ろした。
「。。今時そんな少女趣味なこと、学生だって云わないよ」
「はははっ!そんな充実した学生生活送ってないんだから仕方ねぇだろ?」
「ずいぶん寂しい青春時代だったんだね」
条件反射で口から出る悪態は全て豪快に笑い飛ばされて、もぞもぞ動き出した指に応えて指を絡める。
「うっさいな!お前だって似たり寄ったりのクセに。こういうのは恋人特権だ。嬉しいだろ?」
耳が痺れる程の寒さの中で、お互いの手のひらの間だけ熱くて少し汗ばんでいて、俯いて下唇を噛んで黙ったら不意に頭を掴まれて肩に寄り掛けるように引き寄せられた。
「。。うん」
「お?!素直だな。。どうした?お腹空き過ぎたか??」
あまりにも楽しそうに云うので寄り添った肩におでこで頭突きしてやったら余計嬉しそうに笑ったので、僕もつられて笑ってしまった。
―End―
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