HYPNOTIC DOLLS annex

お題『清寿の欲しいもの』『清寿にあげたいもの』

三上×式部。Ｒ１８指定。
数話前の三上式の続き。。と云うか数年前の話。

秋も深まってきたので切ない話が書きたくて。
１ヶ月も過ぎてしまいましたが一応。。
入隊して一年過ぎた頃の清寿の誕生日のこと。。

―Sei Ｄolce―　


暗黙の了解を破ったのは自分だ――。


任務で初めて大きな怪我をして病院に運び込まれた時、
この男(ひと)は真夜中に突然お見舞いに来てくれた。
お前達のせいで仕事が増えたからこの時間になったんだと云って、
まだ麻酔から醒めたばかりでぼんやりしていた
僕の顔を覗き込んだ。
―― 怖い。。。
僕が急に泣き出したから驚いて、
手のひらで包むようにして頬に触れた。
―― 傍に居て。お願い。ひとりにしないで。
自分では全く覚えていないのだけど、
僕はそう云って涙目で訴えるように見詰めていたと、
後になってから聞かされた。

それから気になって。と、貴方は云った。
その前から気になってました。と、僕から誘った。

上司と部下として食事へ数回。
戸惑わずに触れられるまでに数ヶ月。
甘えても許して貰えるようになったのはほんの数日前。
最後の一線は越えてはならないという暗黙の了解を無視して、
抱いて欲しいと伝える事が出来たのは、
出会ってから一年過ぎた僕の誕生日の晩。。。


キスするのは初めてでは無いのに唇がいつまでも冷たくて、
離される度に吐息が漏れる。
それでも繰り返し唇が重ねられて、
隙間を広げて差し込まれてきた舌に舌を絡め取られると、
身体の中だけ熱くなる。

「震えてるな。。」

強く抱き寄せられて、広い背中に腕を回す。

「寒い？それとも、怖い？」

首筋に顔を埋めて、首を横に振る。

「怖くない。。。緊張してるだけ」

鎖骨の上を唇でなぞらえて、
喘がされている間にシャツの前が開かれてゆく。
本当はそんな音なんてしていないのに、
頭の中でひとつひとつボタンを外されてゆく音が聞こえる。

「あ。。。っ」

片方の胸の突起を舌先が舐り歯を立てて甘く噛まれ、
もう片方を指で弄られるとそれだけで、
意識が飛びそうになった。

「ああ。。。」

指が。。。お腹の傷痕に触れる。
三上さんが初めて僕に触れたのはこの怪我をした日。
とっくに癒えている筈の傷なのに、切なく疼く。

「や。みか。。っ、尊人。。さん。。」

唇が、舌が、臍を弄んで下腹部へ滑る。

「呼び捨てでいい」

こんな時でも冷静な声、口調。。笑み。

「じゃあ僕のことも。。。式部じゃなくて、名前で呼んで」

敏感な部分に触れられて、
恥ずかしいくらい身体が反応している。

「清寿。。。」

低い声が甘く響きながら欲望の先端に絡まる。

「。。。っ」

呼ばれただけで達してしまいそうになるくらい、
本気な自分に泣きたくなる。

「もう一度呼んで。。。っ」

まだ貴方のものになっていないのに、
自然に涙が溢れてくる。

「。。。清寿っ」

「やっ。。。あ。。。あぁ。。んっっ！」

挿れられる痛みよりひとつになれた悦びの方が強かった。

「あっ。。。あ。。。尊人っ、尊人。。。っ」

お互いを名前で呼ばないのは暗黙の了解だった。

「清寿」

いつでも僕がそれを破る。

「　　　」

特刑にしか居場所が無いのに、
欲しがればそれを失ってしまうかもしれないのに、
約束を破ってまで求めてしまう。

「　　　？」

お願い。

「　　　っ」

お願いだから。

「　　　　　　　っ！」



僕が生きていく為の言い訳になって下さい。。。！



「清寿。。。」

声が聴こえて目を開くと、
大きな手のひらが頬を撫でていた。

「う。。。ん。。。？」

心配そうだった顔が優しく綻ぶ。
とろんと蕩けているみたいに身体の奥が熱くて怠いのは、
まだ貴方と繋がっているから。。。だね？

「清寿。愛してる」

耳朶に触れる程唇を近付けて、貴方は囁いた。

「僕も。。。！」

最後に残った暗黙の了解を先に破ったのは
僕では無かった。


―End―