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HYPNOTIC DOLLS annex

企画・リク用別館。 DOLLS・同人・BLに興味の無い方はご遠慮ください。

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可侵不可侵。。

お題1作目。
五十嵐×上條。R指定なし。

他人に踏み込まれることを頑なに拒んできた者は、
一度心を許したら脆いのではないかと。。
けど素直にはなれないところが上條、という話。

コミック9~10巻収録の上條故郷編以前の勝手に捏造話です。
原作のその話の導入部分が意味有り気だったものでつい(汗

Kalafina 『傷跡』のイメージで。
この曲では前にも作品を書いた気がしますが。。
大好きな曲なのでついつい再度イメージお借りしました。




―1.可侵不可侵~kizuato~


「残念だったな、折角来たのに雨で」

細く開けた窓の隙間へ向けて紫煙を吐き出した五十嵐が、表情も無く感情も込めずに云った。

「もう戻るか?」

振り返ってその横顔をちらりと見て、背を向けてから首を横に振る。
エンジンを切ったせいで人の息で曇った車の窓からは一面の灰色を背景に激しく降りつける雨の線が見えるだけで、太ももの上に乗せられた手が子供をあやすように、ぽんぽんと軽く叩いた。
その乾いた音と時折タバコに火をつけるライターの音と雨音と。
この天気では海に面した駐車場に停まっている車など他に居ない。
もともと暗かった景色が徐々に黒くなり、夜になり始めたことを知った。

「何も見えないだろ」

今度は振り向かずに頷く。

「璃宮。帰るぞ」

頭を左右に振る。
溜め息がひとつ聞こえて車内に沈黙が落ちた。
瞼を閉じて、おでこをコツンと窓ガラスに当てる。
後ろから伸ばされてきた手に顎を掬い上げられる様に持たれて咄嗟に首を竦めると、こめかみにくちづけが降ってきた。

「海が見たいなら今度は晴れている時に連れてきてやる」

顔だけ横に向けて、唇へのくちづけを強請る。

「今日見たかっただけだから、“次”に意味は無い」

突っ込んで問い質すこともしないで優しく唇を遊ばせるだけの五十嵐に苛立って、肩に置かれていた手を振り払って正面から向かい合うように座り直す。

「何も訊かないのは僕のこと何でも知っているから?」

そもそも有給休暇を合わせて取ろうと今日を指定された時から、なんだか落ち着かないような、それでいてホッとしたような複雑な気持ちだった。
今日は僕にとって特別な日で、その理由など誰にも云ったことが無い。
でも特刑処刑隊員全員のパーソナルデータを管理・把握する諜報課課長という立場の者ならば知っていてもおかしくはない。

「お前が話してくれたこと以外、俺は何も知らない。紙に書かれたことが全て正しいと信じられないのは職業病だ」

五十嵐は口の端を片方だけ上げて微笑んでから、大きな手のひらで僕の髪をくしゃっとした。

「それに、お前が話したくないことまで無理に訊き出すつもりもないよ。仕事の時と違うんだから」



叩きつける様に降る雨の音が大きく耳の奥へ響いて、五十嵐の低い声が遠く聞こえる。



「僕が育ったのは山奥の小さな集落で、子供の頃海を見たことがなかった。本で知って行ってみたいとわがままを云ったら母はいつか連れて行ってあげると約束してくれて。。でもその約束は果たされることは無かった。。」

今日は母の命日なんだ。

そう告げようとした瞬間に声が詰まって、言葉にならなかった。

「。。母は殺されて。。」
「もういい。黙ってろ」

頬を包むように持たれ目尻を指で擦られて、泣くなよ、と、小さく耳元で囁かれて初めて、自分が泣いていたことに気付いた。
ふわりと頭を抱かれて、胸元に顔を埋める。

「いつかそれから自由にしてやるから」

激しく唇と身体を求めて与えられる快楽を愛情だと信じ何度も手を伸ばしては抱き締められて、愛されることに溺れて悲しい記憶をわずかの間だけ心の中へ封じた。


―End―

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自己紹介:
『DOLLS』(naked ape原作)
二次創作サイト運営。
基本は御子柴×式部。
その他もあり。。かも?

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