HYPNOTIC DOLLS annex

うさこ様よりいただきましたお題『中華』。

三上式。激甘(汗

こちらのページで以前イタリアンな三上式を２作書きまして。。
「このふたりにはイタリアンは合うけど中華は無理ですよね～」(←相当無理矢理に略してみました。。うさこさんすみません)的なご意見があったので、それなら！！と燃えてみましたら。。

なんとまさかの続きものになってしまったと云う。。っ(汗

三上さんのキャラがちょっと崩壊してるような気がしますがお許しを！
続きはもう少しお待ちください。。


タイトルはちゃんと中国語です(笑
意味は検索してみてくださいね。

―宝貝好 vol.1―


子供っぽい。
そう思われたに違いない。

高級そうな中華料理店の個室。
その中央には磨き込まれて黒光りしている丸テーブルとイスが６脚。
等間隔に置かれたイスの、ドアに背を向ける席に、先に着いた三上さんが座っていた。
案内してくれた店員さんはその真向かいのイスを引いてくれたけれど、
ちょっとだけ迷ってからお願いして、別の席に座らせて貰った。
三上さんの右隣の位置。
こんな広い部屋のこんな大きなテーブルにふたりきり。
向かい合わせじゃ遠すぎて、寂しい。
座ってから少しだけイスを左にズラす。
これで近くなった！とひとりでにやけていたら、三上さんが笑い出した。

「。。。笑ってる。。。」
「ああ。。。すまない」

軽く握った拳を唇に当てて口元を隠すようにしたって、眼鏡の下の目がまだ笑っている。

「おかしかったですか？」

真剣な僕の顔を見て、くすくすっ、と、小さく肩が揺れた。

「いや。全然」

職場では決して見せることのない、優しい笑顔。
咳払いをひとつするといつもの冷静な顔に戻っていて、
手を上げて傍らにやってきた店員さんに注文を告げ始めた。
ふたりきりで居られる時間なんて本当に少ないから出来るだけ傍に居たい。
そう思っただけなんだけど。。。子供っぽかったかな。。。？

「式部。ほら」

むくれていたら酒杯が手渡された。
慌てて持ち直して、傾けられた瓶から注がれるモノを受ける。

「車は？」

濃い茶色の液体から強いアルコールの匂いが立つ。

「置いてきた」

現地集合なんて珍しいと思ったら、そういうことだったのか。
三上さんは僕の杯に自分の杯の端をカチンと当ててから、美味しそうに一口呑んだ。

「呑みたかったし、車を置いてきた方が怪しまれない」

もう一口。
咽喉仏が大きく上下に動いた。

「部下とは云え、優秀な諜報課員が多いから苦労しますね」

そんなふうに隠してまで付き合ってくれなくてもいいのに。。。
心の中で思っても、そんな強がりは口に出せない。

「優秀。。。と云うか、あいつ等はくちうるさいから面倒臭いんだ」

今夜は空くから食事でも、と、三上さんから誘ってくれた時は嬉しかったけれども、
貴重な時間を割いてもらっていると思うと申し訳なくて、顔が見れない。


この人に嫌われたら、僕はきっと、生きていけない。


手元が、ふっ、と、軽くなった。

「。。。？！」

唇と口の中が、カァッ、と、熱くなる。

「紹興酒を呑むのは初めてか？」

口移しされたお酒が咽喉を落ちて、濃厚な香りが鼻の中に広がった。

「初めてじゃないけど。。。こんな風に飲まされるのは初めてです」

僕の手から取った杯からお酒を口に含んで、もう一度伸び上がるようにして僕にくちづけてきた。

「特刑副隊長ともあろう者が、スキが有り過ぎるな」

まるでタイミングを計ったかのように、唇が離されて間も無く料理が運ばれてきた。
何事も無かったかのように平然としている三上さんの横で、
酔っ払っているみたいに真っ赤な顔をしている僕。

三上さんもこんな子供っぽいことするんだ。。。

ちらっとこっちを見た視線に笑みを返したら、
微かにではあるけど満足そうに目を細めたように見えた。


―続。