HYPNOTIC DOLLS annex

御子柴×式部。Ｒ30←!?

三上×式部←御子柴という設定で。
３話前の『透明な願いの中に堕ちて。。』の続編。

平井堅『哀歌(エレジー)』を聴いて最初に浮かんだ話。
ひとつ前の五十璃もこの曲からでしたが真逆な感じに。
本来はこっちの話くらい病んでる歌詞かなと思います。
艶っぽい声と相俟って病み度倍増。。だから好き♪←

それでも一番にはなれないと知っていて身を委ねる。。
その哀しさと切なさが伝わると幸いです。

―Elegy―


「後悔、してない？」

「それ笑太君が云うの？」

身体を投げ出すように横たわり気怠く微笑む清寿は綺麗で、誘う様に薄く開かれた唇に唇を重ね合わせる。
舌先を滑り込ませると舌で上顎に押し付けられて、もっともっと奥を求めた。

「後悔してるの、笑太君の方でしょ？。。っ」

唾液の混ざり合う湿った音で煽られて熱くなった下半身を、長い指が撫でる。

「そうだな。そうかもしれない。。」

後孔に指を挿し入れると背中に緊張が走り、快楽の点をわざと外して掻き混ぜると清寿は腰を揺らしてもどかしそうにノドを鳴らした。

「イイ所も全部、こんなに知ってんのにさ俺のもんじゃないって、不公平だと思わねぇ？」

何か云おうとする前に唇を奪って。
呼吸(いき)をする猶予だけ与えてまた重ねて。

「それにキスもえっちも上手くなってくのが、なんか腹立つ」

不意にくちづけを止めて身体を離して、清寿の顔を見下ろす。

「笑うなよ」

返す言葉を見付けられなかった様で、曖昧な微笑みを浮かべた清寿の、真っ白なシーツに広がった紺色の長い髪の上から手を突く。

「なぁ清寿」

巣に掛かった紫色の蝶を仕留めようとしている蜘蛛みたいに、その髪に指を絡めて緩く握る。

「お前をめちゃくちゃに犯して、俺無しじゃいられない身体にしてやりたい」

紫の瞳が俺を捉えて、可笑しそうに細められた。

「いいよ」

「。。え？」

「出来るのなら、そうしてくれてもいい」

何でもない事の様に云い放って清寿は俺の欲望を掴んで自分の後孔へと導くと、覚悟を決めた様な表情(かお)で瞼を閉じた。

「そんな風にされたら本気にすんぞっ？」

ドクン。。

目の奥の、頭の中のどこかで一瞬、聴力も視力も失われるような激しい拍動を感じた。

「笑太君、好きだよ」

ドクン。ドクン。

「三上さんの事が好きになるずっと前から笑太君のことが好きだったって。云ったでしょ？」

濡れた先端を、清寿の中にゆっくりとめり込ませてゆく。
小さく叫んで反らされた咽喉に、唇を這わせて吸って痕跡(あと)を残す。

「最初はっ、オンナのコ泣かすと同居人がウルサいからお前でいいや。。って。。なんて酷い男(ひと)なんだって思った。。っ」

責めるように清寿が呟く。
最初に関係を持ったのは特刑部のシャワールームで、処刑後の高揚を抑える為のはけ口にした。
確かにその時は清寿の気持ちを知った上で、拒まないことも分かっていて、蹂躙した。

「そん。。っな風に僕を欲しがるのはっ、僕が他人（ひと）の物になったから。。なの。。？」

それから何度も同じように愛の無い行為を繰り返して。。
それでも変わらないお前の態度と笑顔に安心していたら、それは実は俺から気持ちが離れていたからだったと後になって知った。

「酷い男(ひと)。。」

下から伸ばされてきた手が、俺の顔に触れる。
人差し指が唇に触れて、口の横のホクロに爪を立てる。

「でも優しくてカッコよくて、嫌いになれない。ホント、ズルいよね」

頬を撫でる手を取って、その手のひらに唇を何度も押しつけた。

「こんなことしてるって知られたら、同居人さんに怒られるどころじゃないよ」

この手を今離したら。

「他のヤツのモノになったから欲しいんじゃない。。」

身体は繋げられても、二度と心を繋げることが出来なくなる。

「ね、笑太君。欲しいばかりじゃ手に入らない物って沢山有るんだよ」

云い訳じみた事すら云えない俺を、優しく悲しげな笑みで清寿が諭す。

「でもね、今一番好きな人じゃない人に抱かれても嬉しい、って思う。。僕も酷いヤツだから」

挿れたまま動かない俺を、焦れた様に強く食い締めながら。


―― このまま、僕を壊して。


最後に口だけが動いて、声無くそう告げた。

ドクン。

理性と感情が振り切れて、激しく責め立てて。
背中に立てられた爪の痛みすら、くちづけの途中で歯を立てられた舌先の痛みですらただ蕩ける程に甘く。
監視カメラに見せ付ける様に、生理的な物とは違う涙を流して嗚咽を上げ続ける清寿を何度も何度も汚した。


それでもやっぱり綺麗だと思う。。俺はとっくにお前に囚われて、壊れていたと知る。


―End―